個人再生は住宅ローン返済中でも家を失わずに借金整理ができる債務整理の方法です

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個人再生は住宅ローン返済中でも家を失わずに借金整理ができる債務整理の方法です

ようやく手に入れたマイホーム。

住宅ローンだけなら十分に支払っていけるのに、子の学費や親の介護など、様々な事情で借り入れが増え、いつの間にか住宅ローンの支払いすら困難になっていませんか。

自己破産をすれば借金はなくなりますが、自宅は売却となり、手放さなくてはなりません。

借金をどうにかしたいが、思い入れのあるマイホームも失いたくない・・・

そんな方は、個人再生(個人民事再生)で問題が解決できるかもしれません。

というのも、個人再生には、住宅ローンに影響を出さないようにしながら、その他の借金のみを減額するという仕組みがあるのです(これを、住宅資金特別条項〈住宅ローン特別条項・住宅ローン特則〉といいます)。

「自己破産」を考える前に、「個人再生」という選択肢がないか、詳しくご紹介します。

住宅資金特別条項を用いた個人再生とは

  • 法律に基づいて借金を整理する「債務整理」の一つです。
  • 手続きは裁判所を使います。
  • 条件がありますが、住宅ローンが残っていてもご自宅に影響が出ないようにすることができます。
  • 住宅ローン以外の借金を大幅に圧縮します。(こちらも諸条件がありますが大まかに言うと1/5程度になるとお考えください)
  • 圧縮された借金には利息が付きません。これを3年ほどで返済します。(例:1,000万円の借金→200万円に圧縮→36回払いだと月に6万円弱)

このように、個人再生とは、マイホームを手放すことなく、住宅ローンの以外の借金を減額することができる方法なのです。

個人再生の申立てができる条件とは

  • 借金を抱え、これ以上支払っていくのが困難な方
  • 住宅ローン以外の借金が5,000万円以下の方
  • 安定した収入があり、圧縮後の借金について、継続して返済を続けることができる方

個人再生を行うには、最低でもこの3つの条件が必要です。

そして、マイホームを残すためには(住宅資金特別条項を利用するためには)、いくつかの条件をクリアする必要があります。

次に個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)について詳しくご紹介します。

個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用すると家が残せます

個人再生の住宅資金特別条項について

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用する条件とは

代表的なものは次のとおりです。

  • 「住宅」のためのローンを分割で支払っていること
  • 個人再生手続きを利用する「本人」が使用する「自宅」であること
  • 住宅に住宅ローン以外の抵当権の設定がないこと
  • 住宅が「本人」の名義であること
  • 《できるだけ満たしたい条件》住宅の価値が低いこと(できれば住宅を売却しても住宅ローンを完済できない状態が望ましいです)

そのほか細かい条件は色々とあるのですが、一つ一つ挙げるとかえって分かりにくくなるため、主要なものに留めます。

「住宅」のためのローンを分割で支払っていること

実際に住宅を建てたり、土地や建物を買うためのローンであることが必要です(借り換えの場合も含みます)。

例えば教育ローンなどは対象になりません。

個人再生手続きを利用する「本人」が使用する「自宅」であること

実際に本人が居住する住宅が必要です。

別荘や人に貸すための不動産は対象になりません。

ただし、単身赴任中であってもいずれは自宅に戻る予定があれば問題ありません。

住宅に住宅ローン以外の抵当権の設定がないこと

住宅特則付きの個人再生手続きにおいては、特別なものとして扱うことができるのは「住宅ローン」のみです。

その他の借金は一律に圧縮の対象としなければなりません。

教育ローンや事業用ローンを借りていて、自宅に他の抵当権が設定されている場合、個人再生の手続きをすると結局これらの抵当権が実行されてしまうため、住宅を残すことができなくなってしまいます。

住宅が「本人」の名義であること

申立ての時点で本人が所有している住宅である必要があります。

ただし、夫婦の共有名義のような場合は住宅特則を利用することができます。

《できるだけ満たしたい条件》住宅の価値が低いこと(できれば住宅を売却しても住宅ローンを完済できない状態が望ましいです)

普通に考えれば住宅の価値は高いほうがいいわけですが、住宅資金特別条項を利用するにあたっては価値が「低い」方が望ましいといえます。

例えば、自宅を売却して1,000万円のプラスになるとしましょう(これをアンダーローンということがあります)。

こういう時に「1,000万円ある借金を200万円に圧縮してください」と言ったらどうなるでしょうか。

ふつうに考えると、債権者からは「自宅を売って借金返して下さい」と言われそうですよね。

民事再生法では、不認可事由として「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」(174条2項4号)と定められています。

借金で首が回らない状態になっていても、財産を売却して借金を返済できるなら、再生手続きで債務だけを都合よく圧縮してもらうことはできないのです。

たとえば、合計800万円のカードローンの毎月の支払ができなくなって相談に来られた方がいらっしゃいましたが、マンションのローン残が1,700万円なのに対して、マンション査定が3,500万円ありました。差額1,800万円が資産となりますので、借金が返済できてしまいます。

一方、ローンの残債務より住宅の価値が低いことをオーバーローンということがあります。

住宅資金特別条項を利用するにあたっては、この「オーバーローン」であるか、そうでなくとも(アンダーローンであっても)住宅の資産価値からローンの財債務額を控除した金額が小さいことが望ましいのです。

住宅を購入する時に多額の頭金を支払っていたり、住宅ローンが残り数年といった状態だったり、都心部の中古マンションで値上がりしている物件だったりすると、自宅の価値が大幅にプラスに(アンダーローンに)なってしまい、再生手続での支払が現実的には困難なことも少なくありません。

なお、住宅ローンの滞納があっても住宅資金特別条項を利用することはできるのですが、一つ問題があります。

というのも、支払いが一定期間滞ると、あなたの代わりに保証会社が銀行へと支払いを行うことになり(代位弁済といいます)、そのままにしておくと住宅の競売へと進んでしまうことがあるからです。

この場合には、代位弁済から6ヶ月以内に個人再生の手続きを行うと、元の状態に戻すことが可能です(これを巻き戻しといいます)。

この期間が過ぎてしまうと住宅資金特別条項の利用ができなくなるのでご注意ください。

住宅資金特別条項付きの個人再生のメリットとは

住宅特則利用の個人再生メリット

メリット①マイホームを手放さないで住み続けることができます

個人再生の大きなメリットは、住宅資金特別条項を利用することで「住宅ローン支払い中のマイホームを失わないで、住み続けることができる」という点です。

これは破産とは異なる、個人再生の大きな特徴です。

メリット②住宅ローン以外の借金を大幅に減額できます

個人再生は、住宅ローン以外の借金を大幅に減額することができます。

住宅ローン以外の借金の減額の目安は以下の通りです。

住宅ローンを除く借金の総額 最低返済額
100万円未満 総額全部
100万円以上500万円以下 100万円
500万円を超え1500万円以下 総額の5分の1
1500万円を超え3000万円以下 300万円
3000万円を超え5000万円以下 総額の10分の1

メリット③個人再生で住宅ローン以外の借金の督促がある場合、受任通知により督促が止まります

個人再生は債務整理のひとつなので、手続きを開始すると、消費者金融などの貸金業者に向けて受任通知を送付し、督促(請求)を止めることができます。

貸金業者からの取立てを直ちに止めることができるのも、個人再生(債務整理)ならではのメリットなのです。

なお、住宅ローンを借りている銀行から別口でカードローンを借りているような場合、住宅ローン特則が利用できるのかと質問をされることがありますが、こういう時はカードローンと住宅ローンを切り離して処理をすることができます(ただ、口座自体は凍結されます)。

メリット④競売を回避(中止)することができます

住宅ローンの返済が滞ると、抵当権を行使され、自宅が競売にかけられるおそれがあります。

しかし、競売が始まったとしても諦めることはありません。

入札期日までに個人再生の手続きをとれば、競売を止める余地があります(ただし、税金の滞納処分による競売の場合は止めることができません)。

メリット⑤住宅ローンの負担を軽くすることができます

住宅資金特別条項を利用すると、マイホームを失わずに済むだけではなく、住宅ローンの返済期間を延長することも可能です。

返済期間の延長は、最大10年間延長することができ、それにより、毎月の返済額を減らして、月々の返済の負担を軽くすることができます。

再生計画で決定した3年、もしくは5年間は住宅ローンの元本部分を猶予してもらい、返済負担を軽くすることができるのです。

個人再生のデメリットとは

個人再生のデメリット

個人再生後は新規借入の審査に通らない可能性があります

住宅ローン特別条項を利用した個人再生は債務整理なので、信用情報機関に事故情報として登録されます。

信用情報機関に登録されると、その期間は新規の借入の審査に通ることが難しくなります。

しかし、登録される期間は約5年~10年ほどで、その後抹消されると言われています。

事故情報が抹消されると、新規の借入や住宅ローンを組むことが可能ですが、ローン会社によって審査基準が異なるので、借入ができない可能性もあります。

個人再生後は、審査に通りやすくするためにも、信用される経済力を身につけるよう心がけ、継続して安定した収入を得ている状態にしておきましょう。

代表的なデメリットは以上のとおりなのですが、他にも官報という国の出版物に掲載されることなど、この他にいくつかのデメリットがございます。

事案によってデメリットも異なりますので、個別にお問い合わせください。

住宅ローンに連帯保証人がいる場合でも住宅資金特別条項の利用ができます

住宅ローンに連帯保証人がいる場合でも、本人(主債務者)のみが個人再生を申立て、住宅資金特別条項を利用することが可能です。

この場合、再生計画で定めた内容どおりに支払いを継続すれば、連帯保証人に迷惑をかけずに済む可能性があります。

逆に、住宅ローンの連帯保証人だけが個人再生を申立てた場合は難しい問題が生じますが、多くの場合は住宅資金特別条項を利用することができません。

このような場合は、本人(主債務者)と連帯保証人の両方が一緒に個人再生の申立てをするなど工夫して対応することになりますが、個別の案件ごとに検討が必要です。


さて、この「連帯保証人」に似たものに「連帯債務者」というものがあります。

間違いやすいところなので、次にご紹介します。

住宅ローンにおいて、連帯保証人と連帯債務者はその目的が異なります

住宅ローンの連帯保証人とは

主債務者の支払いができなくなった時に、代わりに支払いを行うのが保証人です。

これが「連帯」保証人となると「先に主債務者に請求してください」等の主張ができないため、ほとんど主債務者と同等の責任を負っていることになります。

住宅を購入する際に連帯保証人を付ける主要な目的は「銀行側が住宅ローンを回収しやすくする」というものです。

保証人に迷惑がかかるとなれば主債務者が頑張って支払いをするでしょうし、万が一のときも保証人が支払ってくれるかもしれません。

ちなみに、連帯保証人を付ける場合、住宅ローンを通すときに参考にする収入は原則として主債務者のものだけとなります。

また、住宅の名義は主債務者のものとするのが普通です。

余談ですが、いわゆる住宅ローン控除は主債務者の一人分のみが適用となります。

住宅ローンの連帯債務者とは

住宅を購入する際に「連帯債務者」を設定する主要な目的は「収入を合算し、借入額を増やす」ことです。

例えば夫が主債務者、妻を「連帯保証人」とした場合には夫の収入のみを基準として借入額の上限が設定されます。

一方、夫と妻を「連帯債務者」とした場合には、2人の収入を合算した金額を基準に上限が設定されるため、より多くのお金をかりることが可能となります。

この場合、夫婦は独立した返済義務を負うことになります。

また、住宅の名義は夫婦の共有となり、住宅ローン控除も2人分が適用されます。

連帯債務の場合も住宅資金特別条項を利用できることが多いのですが、ローンの借り方や抵当権の設定の仕方によっては問題が生じることがあるため、個別の事案ごとに検討が必要です。

ペアローンとは

以上とよく似たものにペアローンというものがあります。

これは、夫と妻、親子などが別々に住宅ローンの契約を行い、それぞれが返済する方法です。

連帯債務と何が違うのかというと、連帯債務は複数名で5000万円などまとまったお金を借りるのに対し、ペアローンの場合は例えば夫婦で2500万円ずつ借りるという形をとることです(複雑な話ですが夫婦相互に連帯保証をするため銀行からすると連帯債務の場合と余り変わりはありません)。

このペアローンの場合も収入を合算することができるため、連帯債務のように多くのお金を借りることが可能です。

また、ペアローンについても住宅資金特別条項を利用することができるのですが、夫婦で同時に申立てをするなど更に条件が加わってきます。

これまでに夫のみを単独で申立てて住宅資金特別条項が認められた例もありますが、金融機関の協力が必要となってくるため事案ごとの検討が必要です。

住宅ローン以外の借金がなくても個人再生ができます

個人再生の住宅資金特別条項は、住宅ローンとその他の借金があって初めて申立てる価値がありそうですが、住宅ローン以外に借金がなくてもメリットがあります。

それは、期限の利益の回復返済期限の延長というメリットです。

住宅資金特別条項の条件を満たしていれば、住宅ローン以外に借金がなくても、制度を利用することが目的の個人再生の申立てができるのでご紹介したいと思います。

期限の利益の回復ができます

住宅ローンを滞納すると、約定書に従って、住宅ローン会社から住宅ローンの全額返済の請求をされても拒否できない状況になります。

このことを「期限の利益を喪失する」といいます。

期限の利益が喪失すると、保証会社による代位弁済が行われ、マイホームを失いかねませんが、住宅資金特別条項を利用すると、代位弁済前の状態に戻すことができます。

これを期限の利益の回復といいます。

前述しました「巻き戻し」がこれにあたります。

返済期限の延長ができます

住宅資金特別条項を利用すると、住宅ローンのリスケジュール、つまり返済条件の見直しが可能となります。

これにより、返済期間を一定期間延長したり、元本の返済を一定期間猶予してもらうことができます。

住宅ローンが全く無い場合でも住宅を残して個人再生をする余地があります

住宅ローンを既に完済した方や、親から相続した自宅に住んでいる場合、先祖代々の田畑を残したいというような方であっても個人再生によって借金を圧縮することが可能です。

この場合は住宅資金特別条項を利用せず、一般の個人再生手続きの中で処理することになります。

ただし、例えば500万円、1000万円といった値段で不動産が売却できる場合には「個人再生で借金を圧縮してください」とお願いしても、「まずは不動産を売って返しなさい」という話になってしまう場合があります。

よって、再生計画をたてるのが非常に難しくなるため、残すことができる不動産はあまり価値の無いものに限られるとお考えください。


ステップ法律事務所では、経験豊富な弁護士が在籍しており、お客様に合った解決策をご提案します。

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